【執筆者:編集部 高田ゆみ】
かつては世界最大とも言われた戦艦大和を引き上げない理由ってなんだろう?そもそも沈没している場所はどこ?
海底に沈没したまま残されているのは、費用や関係者の心情などさまざまな背景が考えられます。
この記事では、沈没した戦艦大和について以下の項目を紹介します。
戦艦大和のこと
- 高額な沈没船の引き上げ費用
- 引き上げ作業につながらない背景
- 沈没している場所と状態
- 調査で引き上げされたもの
映画やアニメなどにもよく取り上げられる戦艦大和について、理解を深めるきっかけにもなる内容なのでぜひ参考にしてみてください。
目次
戦艦大和を引き上げない理由|考えられる4つの背景
戦艦大和を引き上げないのは、主に4つの理由が考えられます。
それぞれの理由を考えると、引き上げが現実的ではないことが見えてくるはずです。
沈没船の引き上げ費用が高額だから
戦艦大和を引き上げない大きな理由として考えられるのが、費用の問題です。
沈没船を引き上げする作業(サルベージ)は高額な費用がかかるため、どこから捻出するのか、誰が負担するのかなどの問題があります。
なお、2016年に呉市がおこなった潜水調査だけでも費用は8,000万円でした。
仮に高額な引き上げ費用を捻出できたとしても、海底から引き上げて適切に保存処理しなければいけない課題があります。
海底から引き上げて保存する技術の問題
戦艦大和が沈んでいるのは水深350メートルもの海底であること、沈没から半世紀以上経過して腐食が進んでいることから、うまく引き上げできない可能性も考えられます。
2016年に実施した潜水調査では鮮明な映像撮影に成功しており、腐食が進行している船体の一部が確認されました。
無理に引き上げて損傷するよりも、貴重な文化遺産として残しておくべきとの考え方もあります。
水中文化遺産としての考え方
海中に沈んだままの戦艦や沈没船から無断で遺品を回収して売買する、トレジャーハンターが問題視されたことで定められたのがユネスコの水中文化遺産保護条約です。
水中文化遺産になるのは海中で100年経過した時点なので、1945年に沈没した大和は2045年に保護対象となります。
また、「引き上げずにそのまま眠らせておくべき」との声が、遺族や元乗組員から上がっていることも忘れてはいけません。
墓標と考える遺族や元乗組員など関係者の心情
戦艦大和には約3,300人もの乗組員が搭乗していましたが、生存者は300人にも満たなかったそうです。(※1)
関係者も早く捜索したいとの思いはあったはずですが、当時は沈没した場所を正確に探して引き上げる技術がなかったため、諦めざるを得ない状況でした。
関係者は沈没した大和を墓標と捉えていたので、「お墓を荒らされるようなものだ」「ゆっくり眠らせてあげたい」などの意見があるのも事実です。
このようにさまざまな課題があるため、戦艦大和の完全な引き上げには至っていませんが、これまでの調査では一部分だけ回収されたものがあります。
沈没した戦艦大和の発見場所はどこか・現在の状況
戦艦大和は終戦後すぐに発見されたわけではなく、1985年に初めて船体が確認されるまでは長い年月を要しています。
戦艦大和が発見されるまで
1952年に大和の元乗組員が執筆した「戦艦大和ノ最期」を刊行、1953年に映画化されたことで戦艦大和の存在が広く国民に知れ渡りました。
戦艦大和が沈没している大まかな場所はわかっていたものの、正確な位置は特定できずどのような状態で沈んでいるのかも不明でした。
宇宙戦艦ヤマト
感銘のシーン。
※干上がった嘗ての海底に埋もれる大和の残骸。
※こちらは2199、リメイク版。細かくなってる。
※交互に脚がしまわれる仕様の偵察機。
※囮となった「ゆきかぜ」の壮烈な最後。 pic.twitter.com/S65yI0ieqG— 朽枯堂 (@kyukodo) August 5, 2018
戦艦大和が発見されてから現在まで
戦後40年の節目となる1985年に「海の墓標委員会(委員長・辺見じゅん)」が捜索をおこない、海底に沈んでいる戦艦大和を発見しました。
辺見じゅんさんは、映画で大きな話題になった「男たちの大和/YAMATO」の原作者です。
#DidYouKnow that about Furuno?
北緯30度43.17分、東経128度04.00分。戦艦大和発見[1985年]
時速1.8キロで北上する対馬暖流の底、水深340m。当時、フルノの技術の粋を集めた電子機器が、戦後40年間眠り続けている戦艦大和の姿をとらえました…#フルノの歩み #フルノ #古野電気 #戦艦大和 pic.twitter.com/3KfvF2OeGJ— FURUNO|古野電気株式会社【公式】 (@furuno_jp) July 1, 2020
戦艦大和が発見された場所は、北緯30度43分東経128度04分の坊ノ岬沖です。
1985年の調査時に回収された一部の引き上げ品は、貴重な資料として大和ミュージアムに展示されています。
本日(6/8)の展示解説ツアー、終了いたしました。
次回は、7月13日(土)11時~です。画像は本日の様子。
戦艦大和の引揚げ品46cm主砲火薬缶の前で解説中の学芸員。#大和ミュージアム pic.twitter.com/WaCb0g80Po— 大和ミュージアム (@YamatoMuseum) June 8, 2019
2016年の調査で鮮明な映像撮影に成功し、現在どのような状態で海底に沈んでいるのか判明しています。
9月に大和ミュージアムのこの「海底に眠る軍艦」展に行ってきましたがしっかり大和の最新の海底状況模型です pic.twitter.com/GpxXbil5Em
— れんにゅう🌔 (@holyship_51) October 19, 2019
大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)では、戦艦大和を再現した模型や、沈没後に約7割が引き上げられた戦艦陸奥の主砲身やスクリューなどの展示物を確認できます。
また、奈良県にある大和神社(おおやまとじんじゃ)は、戦艦大和ゆかりの神社です。
参道の長さ(約250m)は戦艦大和とほぼ同じで参拝した際には大和の大きさがよくわかるので、機会があればぜひ訪れてみてください。
同時にこの記事も読まれています
結論|戦艦大和は引き上げない理由はさまざまな背景がある
- 引き上げ費用は数億から数百億円になる可能性がある
- 現在は腐食が進行している
- 水中文化遺産として残す考え方も
- 引き上げを望まない関係者も多い
- 一部の引き上げ品は大和ミュージアムで確認できる
かつては「世界最大」「不沈艦」とも言われた戦艦大和が完全に引き上げされていないのは、費用や関係者の心情などさまざまな理由があります。
発見されるまでは伝説のように語られた部分もありますが、何度か実施された潜水調査でわかったのは無残な状態で眠る姿でした。
完全に引き上げるのではなく、今はただ静かに眠ってほしいと願う遺族や元乗組員の気持ちが痛いほどよくわかるのではないでしょうか。
戦艦大和については呉市の大和ミュージアムにさまざまな展示物があるので、ぜひ機会があれば訪れてみてくださいね。